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淋菌感染症(淋病)は、クラミジアと並び国内で多く報告される性感染症の一つです。

どなたにも感染し、放置すると不妊や慢性の骨盤痛など重大な健康被害につながることがあります。

症状が軽くても進行するため、早期発見と治療が不可欠です。

本記事では、症状や感染経路、検査・治療方法、そして予防のポイントを助産師の視点からわかりやすく解説します。

大切な身体と未来を守るために、正しい知識を持ちましょう。

※なお本記事では医学的説明のために「男性」「女性」という表現を用いますが、これは解剖学的な特徴に基づくものであり、性自認や性的指向とは関係なく、誰もが性感染症に感染し得ることをご理解ください。

淋菌感染症とは

淋菌の特徴と感染のしくみ

淋菌感染症は、Neisseria gonorrhoeae(淋菌)という細菌が生殖器や咽頭、直腸などの粘膜に感染して起こります。
非常に感染力が強く、1回の性行為でも高確率で感染することが知られています。
粘膜同士の直接接触で菌が侵入し、感染部位に炎症を起こします。
特に症状が軽い場合や無症状のことも多く、知らないうちにパートナーへ感染を広げてしまう可能性が高いため、予防と早期の検査が重要です。

日本における感染の現状と増加傾向

日本では淋菌感染の報告数が近年増加しており、特に若年層や性的パートナーが複数いる層での感染が目立ちます。
抗菌薬耐性菌の問題も深刻化しており、従来使用してきた抗生物質が効果を示しにくくなり治療が難しくなるケースが報告されています。
また、感染者の中には自覚症状がないまま長期間経過する人も多く、知らずに他者へ感染させる「隠れた流行」も課題です。
感染状況を理解し、個人レベルでの予防意識を高めることが必要です。

主な感染経路

性行為による感染パターン

淋菌は、膣・肛門・口腔での性交、いずれでも感染します。
性器同士の接触だけでなく、口や喉を介して咽頭に感染することもあります。
咽頭感染は自覚症状が少なく、風邪や喉の炎症と間違われやすいため注意が必要です。
また、感染部位ごとに症状や潜伏期間が異なるため、リスクのある行為をした後は早めに検査を受けることが推奨されます。

性行為以外でもある感染例

まれではありますが、出産時に母子感染が起こることがあります。
この場合、早期の破水や流早産を招くリスク、出生児が結膜炎(淋菌性眼炎)を発症し、失明のリスクも伴います。
また、不衛生な医療器具やタオルの共用などで感染する可能性も完全には否定できませんが、日常生活での接触による感染はほとんどありません。
それでも性感染症の本質を理解し、感染経路を正しく知ることが予防の第一歩です。

男女別の症状

※本記事では症状を説明するにあたり、解剖学的な特徴に基づいて「男性」「女性」という表現を用いています。
性自認や性的指向とは関係なく、誰もが性感染症に感染し得ることをご理解ください。

男性にみられる主な症状

男性では感染から2〜7日後に排尿時の痛みや尿道からの膿が現れやすくなります。
膿は黄白色で量が多く、強い違和感を伴うことが特徴です。
放置すると精巣上体炎を引き起こし、精子の通り道が塞がれることで不妊につながる恐れがあります。
軽症で経過することは少ないため、症状があれば速やかに受診することが重要です。

女性にみられる主な症状

女性では無症状のまま経過することが多く、症状が出ても軽い下腹部痛や不正出血、排尿時痛など一見ありふれたものです。
しかし放置すると骨盤内炎症性疾患(PID)へ進行し、卵管閉塞による不妊や慢性骨盤痛の原因になります。
自覚症状が乏しいため、パートナーの感染が判明した場合やリスクのある行為後は積極的な検査が必要です。

検査と治療方法

検査の種類と受けるタイミング

検査は尿検査や膣分泌物・咽頭ぬぐい液などから行い、PCR法で菌の有無を調べます。
感染の可能性がある行為から2〜7日後以降に検査すると精度が高まります。
咽頭感染は自覚症状が少ないため、リスクのある行為をした場合は部位別に複数の検査を受けることが推奨されます。

治療薬とパートナー治療の重要性

淋菌感染症は抗菌薬で治療しますが、経口薬だけでは効果が不十分な場合もあるようで、第一選択は注射薬を用いられることが多いです。
さらに耐性菌が増えており、抗菌薬を複数使用するため治療が長引く場合もあるようです。
また、自分だけでなくパートナーも同時に治療する「パートナー治療」が欠かせません。
治療後は再検査を行い、完治を確認してから性行為を再開することが重要です。

予防とセルフケア

コンドームの正しい使い方と予防効果

コンドームは淋菌感染症や性感染症の予防に非常に有効です。
ポイントは、性器同士が接触する前から装着することです。
挿入直前ではなく、最初から着用することで感染リスクを大幅に減らせます。
肛門や口腔での性交でも使用することで、直腸や咽頭への感染も防げます。
破損や脱落を避けるため、サイズや使用期限の確認も大切です。
コンドームを正しく使うことは、自分とパートナーの健康を守る最初のステップです。

定期検査と早期受診のすすめ

淋菌感染症は無症状のことが多く、気づかないまま進行することがあります。
そのため、性感染症リスクがある行為をした後や複数のパートナーがいる場合には、定期的な検査が重要です。
保健所や性感染症外来では匿名・無料で検査を受けられることもあります。
感染が判明した場合は早期に治療を開始することにより、不妊や骨盤内炎症性疾患(PID)などの重篤な合併症を防げます。
また、パートナーも同時に検査・治療を行うことで再感染を防ぎ、関係を安心して続けられます。
複数のパートナーとの関係を解消することも予防につながります。
少しでも体調に変化を感じたら、迷わず医療機関に相談しましょう。

次回シリーズ予告:梅毒について知ろう

淋菌感染症について学んだあとは、次回シリーズで梅毒について共に学べたらうれしいと思います。
梅毒は「昔の病気」と思われがちですが、近年国内で感染報告が増加しています。
初期症状はほとんど自覚できず、進行すると心臓や神経、胎児にも影響を及ぼす可能性があります。
次回の記事では、梅毒の症状の段階、検査・治療法、パートナーへの影響まで、助産師の視点で解説予定です。
淋菌感染症と同じく、正しい知識と早期対応が健康を守る鍵です。
ぜひ次回もチェックをお願いします。
また、「知ることからはじまる生と性の健康」・「だいじな身体と未来のために~性感染症のはなし~」シリーズの過去ブログは下記リンクから。

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