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『知ることからはじまる生と性の健康』

『だいじな身体と未来のために〜性感染症のはなし〜』シリーズ第8回

妊娠や出産を迎える女性にとって、性感染症は見過ごせない大切なテーマです。

妊娠中に感染していると、あかちゃんに影響を与える可能性があることをご存じでしょうか。

母子感染や早産・低体重児のリスクを防ぐためには、妊娠初期からの検査と早めの対応が重要です。

本記事では助産師の視点から、性感染症と妊娠・出産の関わりをわかりやすく解説し、あかちゃんを守るためにできることを一緒に考えていきましょう。

また、シリーズ記事もぜひご参考にしてください。

妊娠と性感染症の関係

なぜ妊娠中の性感染症に注意が必要なのか

妊娠中は女性の身体が大きく変化し、免疫力も低下しやすいため、性感染症にかかるリスクが高まります。
さらに妊娠中に感染があると、流産や早産、羊水感染などの合併症を招くこともあります。
性感染症は自覚症状が乏しい場合が多く、気づかないうちに進行してしまう点も注意が必要です。
特にクラミジアや梅毒、B型肝炎、HIVなどは母子感染につながる可能性があり、妊婦健診での早期発見が重要です。
「自分には関係ない」と思わず、誰にでも起こり得ることとして理解することが第一歩になります。

妊娠経過や出産に及ぼす影響

性感染症は、妊娠の経過や出産方法に直接影響する場合があります。
たとえば淋菌やクラミジア感染は早産や破水のリスクを高めることが知られています。
梅毒は胎盤を通じて胎児に感染し、先天梅毒を引き起こす恐れがあり、出生後のあかちゃんの健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
さらにHIVに感染している場合は、帝王切開や母乳栄養の制限など、出産や育児の選択肢にも影響が出ます。
これらを予防するためにも、妊娠早期の検査と適切な対応が欠かせません。

あかちゃんへのリスク(母子感染)

代表的な性感染症と母子感染の可能性

母子感染とは、妊娠中や出産時にあかちゃんへ感染が伝わることを指します。
代表的な性感染症として、クラミジアは分娩時にあかちゃんの目や呼吸器へ感染し、新生児結膜炎や肺炎を起こすことがあります。
梅毒は胎盤を通して胎児に感染するため、流産や死産の原因になることもあります。
HIVやB型肝炎は血液や体液を介して母子感染しますが、適切な薬や処置を行うことで感染リスクを大きく下げることが可能です。
母子感染の知識を持つことが、あかちゃんの健康を守る第一歩です。

あかちゃんに起こりうる症状や合併症

性感染症による母子感染は、あかちゃんにさまざまな影響を与える可能性があります。
クラミジア感染では出生直後に結膜炎や肺炎を発症することがあり、治療が遅れると重症化することもあります。
梅毒に感染すると先天梅毒となり、発達の遅れや臓器障害など深刻な後遺症を残すことがあります。
HIVは母乳を通じても感染する可能性があるため、授乳方法の選択も大切です。
これらのリスクは、母体が妊娠中に正しく検査・治療を受けることで大幅に軽減できます。

妊娠中に行う検査とその重要性

妊婦健診で調べる性感染症

妊婦健診では、B型肝炎、梅毒、HIV、クラミジアなどの性感染症を調べる検査が組み込まれています。
これはあかちゃんを母子感染から守るために欠かせないものです。
感染が早期に見つかれば、薬による治療や出産方法の調整など、リスクを減らす対策が取れます。
検査は血液検査や膣分泌物の検査などで行われ、妊婦さんに大きな負担はありません。
自覚症状がない場合でも、検査を受けることで安心につながります。

陽性時の対応と治療の流れ

検査で陽性となった場合も、過度に不安になる必要はありません。
多くの性感染症は治療が可能であり、妊娠中でも使用できる薬があります。
たとえばクラミジアや淋菌は抗生物質で治療でき、梅毒もペニシリンによる治療で改善が見込めます。
HIVやB型肝炎では、母子感染を防ぐために抗ウイルス薬や分娩方法の選択が行われます。
大切なのは、医師や助産師と連携して適切に対応することです。
検査結果に基づいた早めの対処が、あかちゃんの健康を守る最大の鍵になります。

パートナーと一緒に考える性感染症対策

カップルで取り組む検査と治療

性感染症はパートナーとの関わりで広がるため、妊婦さんだけが検査や治療を受けても完全には防げません。
妊娠をきっかけに、夫婦やカップルで一緒に検査を受けることが望ましいです。
特にクラミジアや淋菌は、再感染のリスクを防ぐためにもパートナー双方の治療が必要です。
「一緒にあかちゃんを守るために」という意識を共有できると、協力して取り組むきっかけになります。

話し合いと予防のための工夫

性感染症対策には、日常のパートナーとのコミュニケーションが欠かせません。
性感染症の話題は切り出しにくいと感じる方も多いですが、「あかちゃんのために」と目的を共有すると前向きに話せる場合があります。
また、避妊具の適切な使用や定期的な健康チェックも大切な予防策です。
妊娠を通して、夫婦やカップルでお互いの健康や生活を見直すことは、あかちゃんにとっても大きな安心につながります。

まとめと次回予告

本記事のまとめと第9回「性感染症の検査と相談」予告

妊娠中の性感染症は、母体だけでなくあかちゃんにも大きな影響を与える可能性があります。
母子感染を防ぐためには、妊娠早期からの検査、適切な治療、そしてパートナーと協力する姿勢が大切です。
性感染症は正しい知識と早めの対応で防げる病気です。

👉 次回(第9回)は「性感染症の検査と相談:どこでどう受けられる?安心へのステップ」と題して、保健所・病院・自宅キットなど、検査や相談の方法を具体的に紹介します。

かりゆし助産院の出前授業・セミナーのご案内

かりゆし助産院では「生と性の健康」をテーマに、学校や地域、企業向けに出前授業やセミナーを行っています。
性感染症や妊娠・出産の知識を分かりやすくお伝えし、参加者の年齢や背景に合わせた内容で進めます。
社員の健康管理を支援する「健康経営セミナー」も承っております。
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