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「性教育」と聞くと、どんなことを思い浮かべますか?

生理や精通など、からだの変化について学ぶこと。
妊娠や出産について知ること。
性感染症や避妊について学ぶこと。

もちろん、これらも性教育の大切な内容です。

でも、性教育は、それだけではありません。

自分のからだを知ること。
自分の気持ちを大切にすること。
自分も相手も、一人ひとりが大切な存在だと知ること。

こうした学びも、性教育の大切な一部です。

身体や性、人との関係、自分の権利などについて、発達段階に応じて幅広く学ぶことを「包括的性教育」とされています。

そして、その学びは、特別な教材を使ったり、時間を設けたりすることだけから始まるのではありません。

実は、毎日の子育ての中にも、からだを大切にする姿勢を伝える機会があります。

そのひとつが、あかちゃんのおむつ替えです。

おむつ替えは、あかちゃんの健康や清潔を守るために欠かせないケアです。

そのとき、これから何をするのか声をかけたり、あかちゃんの様子を見ながら関わったりすることも、からだを大切にする姿勢を伝える機会になります。

今回は、0歳から始める性教育シリーズ第2弾として、毎日のおむつ替えを通してできる「からだを大切にする関わり方」について、助産師の視点からお伝えします。

おむつ替えは、あかちゃんを大切にする時間

毎日のケアだからこそ、できること

あかちゃんのおむつ替えでは、毎日のようにあかちゃんのからだに触れます。

おしりをきれいにする。
おむつを交換する。
服を整える。

どれも、あかちゃんの健康や清潔を守るために必要な大切なケアです。

だからこそ、おむつ替えを単なる作業として終わらせるのではなく、あかちゃんのからだを大切にする時間として考えてみませんか?

あかちゃんがまだ言葉を話せなくても、目の前にいるあかちゃんをひとりの人として丁寧に扱うことはできます。

毎日の何気ないお世話の中にも、からだを大切にする関わりを育むきっかけがあります。

声をかけることは、大人自身が落ち着くことにもつながる

看護学生がおむつ替えをする場面でも、こうした関わりの大切さを感じることがあります。

慣れないケアに緊張し、あかちゃんが泣いたり動いたりすると、無言で黙々とおむつを替えることに精いっぱいになってしまう学生もいます。

そんなとき、私は横から、

「きれいにしてもらえるね」

と声をかけることがあります。

すると、学生の表情がやわらぎ、落ち着きを取り戻していく様子が見られることがあります。

焦ることで、かえって便が広がってしまうなど、思うように進まないことも多くあります。そんなときこそ、ひと呼吸おいて、あかちゃんの様子を見てみると自分も落ち着けることがあります。

これは、看護学生だけの話ではありません。

子育て中も、あかちゃんが泣いたり、おむつ替えが思うように進まなかったりすると、焦ってしまうことがありますよね。

そんなときは、少し深呼吸して、あかちゃんにひとこと声をかけてみる。

声をかけることは、あかちゃんにこれからすることを伝えるだけでなく、大人自身が落ち着いて向き合うきっかけにもなります。

いつも完璧にできなくても大丈夫。あかちゃんの様子を見ながら、大切に向き合おうとすることが大切です。

では、実際のおむつ替えでは、どのように声をかけるとよいのでしょうか。

「今から○○するね」と声をかけてみよう

触れる前に、ひとこと伝える

あかちゃんのおむつを替えるとき、

「おむつを替えるね」
「服を脱ごうね」
「足を持ち上げるね」

と、これからすることを言葉にしてみましょう。

あかちゃんが言葉の意味をすべて理解できなくても、声をかけながら関わることは、からだに触れるケアを丁寧に行うきっかけになります。

また、声をかけることで、大人自身も次に何をするのかを意識し、落ち着いてケアを進めやすくなります。

成長して言葉を理解できるようになってからも、「今から何をするのかを伝える」という関わりを続けていくことができます。

終わったことも伝えてみる

おむつ替えが終わったら、

「きれいになったね」
「終わったよ」

と伝えてみましょう。

始めるときだけでなく、終わったことも言葉にする。

そんな小さな声かけを重ねていくことが親子のコミュニケーションにできます。

もちろん、毎回きちんと声をかけなくても大丈夫です。

忙しいときは、急いでおむつを替えることもありますよね。

「できるときに、ひとこと」

それくらいの気持ちで十分です。

おむつ替えのときに、これからすることを伝え、あかちゃんの様子を見ながら関わる。

そんな日々の積み重ねは、あかちゃんのからだを大切にすることにつながっていきます。

次は、からだを大切にするために、もうひとつ意識したいこと。

おむつ替えのときに、からだの名前を自然に伝えることについて考えてみましょう。

からだの名前を、自然に伝えよう

日常の中で、からだの部位を言葉にする

おむつ替えは、からだの名前を自然に伝える機会にもなります。

「おなかすっきりしたね」
「足をあげるよ」
「おしりをきれいにするね」

など、普段の会話の中で、からだの部位を言葉にしてみましょう。

小さなころから、からだについて話すことを特別なことにしない。

それは、子どもが成長して自分のからだについて知りたいと思ったときにも、話しやすい家庭の雰囲気をつくることにつながります。

大切なところだからこそ、丁寧に

おむつで覆われている部分は、あかちゃん自身ではまだ十分にケアできない場所です。

だからこそ、大人が丁寧に扱うことが大切です。

「恥ずかしいところだから隠す」という考え方ではなく、

「自分のからだの一部として、大切に扱う」

という気持ちで関わっていきましょう。

プライベートゾーンについて、子どもにどのように伝えていくのかは、シリーズ第5弾で詳しく取り上げます。

あかちゃんの「嫌」にも目を向けてみよう

あかちゃんは、言葉以外でも気持ちを伝えています

あかちゃんは、まだ「嫌」「やめて」と言葉で伝えることができません。

でも、

泣く。
顔をそむける。
身体をよじる。
足をばたつかせる。

そんな反応で、不快感や戸惑いなどを表していることがあります。

もちろん、すべての反応が「嫌」という意味とは限りません。眠い、おなかがすいた、動きたいなど、さまざまな理由が考えられます。

だからこそ、

「どうしたのかな?」

とあかちゃんの様子を見ながら関わってみることが大切です。

あかちゃんの反応をよく見て、必要に応じて声をかけたり、少し待ったりすることも、からだや気持ちを大切にする関わりのひとつです。

嫌がったときも、必要なケアは大切に

ここは、子育ての中で迷いやすいところ。

おむつ替えは、あかちゃんの清潔や健康を守るために必要なケアです。

あかちゃんが嫌がったからといって、毎回おむつ替えをやめるわけにはいきません。

大切なのは、あかちゃんの反応を無視して、ただ急いで終わらせようとするのではなく、あかちゃんの嫌を受け止める言葉をかけながら、気持ちにも目を向け必要なケアを行うこと。

例えば、

「嫌だったね」
「今からきれいにするよ」
「もう少しで終わるよ」

と声をかけてみましょう。

必要なケアを行いながら、あかちゃんの様子を見て、できる範囲で負担を減らす工夫をすることもできます。

あかちゃんの嫌の気持ちを大切にしながら、健康を守るために必要なケアを行うことは、両立できます。

「あなたのからだは大切だよ」を毎日の中で

大人の関わりから伝えられること

性教育というと、「何を教えるか」に目が向きやすいかもしれません。

でも、0歳からできることは、知識を教えることだけではありません。

まずは、大人があかちゃんのからだを大切に扱うことです。

おむつを替える前に声をかける。
あかちゃんの様子を見る。
必要なケアを丁寧に行う。
あかちゃんの反応にも目を向ける。

こうした一つひとつの関わりを大切にしてみましょう。

完璧でなくても大丈夫。小さな積み重ねを大切に

「毎回ちゃんと声をかけなきゃ」
「いつも丁寧に対応しなきゃ」

と思わないで大丈夫です。

育児には、時間に追われる日があります。

あかちゃんが泣いていて、とにかく急いでおむつを替えなければならないこともありますよね。

それで大丈夫。

大切なのは、毎回完璧にすることではありません。

「あなたのからだは大切だよ」

という気持ちを、日々の関わりの中で少しずつ伝えていくことです。

そんな小さな積み重ねが、子どもが自分のからだや気持ちを大切にしていくための土台のひとつになっていきます。

まとめ

今日からできる、おむつ替えの3つのポイント

ここまで読んで、

「じゃあ、今日から何をしたらいい?」

と思われた方へ。

まずは、この3つから始めてみませんか?

POINT 1|始める前に声をかける

「おむつ替えるね」
「今からきれいにするね」

これからすることを、ひとこと伝えてみましょう。

POINT 2|からだを丁寧に扱う

おむつ替えは、あかちゃんのからだに触れる大切なケアです。

「足をあげるよ」
「お尻をきれいにするね」

と声をかけながら、あかちゃんの様子を見て関わります。

POINT 3|あかちゃんの反応にも目を向ける

泣いたり、身体をよじったり、顔をそむけたり。

そんな反応があったら、

「どうしたのかな?」
「嫌だったね」

と、あかちゃんの気持ちや様子に目を向けてみましょう。

必要なケアは行いながら、あかちゃんの気持ちも大切にする。

それで十分です。

毎日の関わりから始まる、0歳からの性教育

性教育は、思春期になってから学ぶものだけではありません。

自分のからだを知ること。
自分の気持ちを大切にすること。
自分も相手も大切な存在として尊重すること。

こうした学びは、子どもの成長に合わせて、日々の暮らしの中でも少しずつ伝えていくことができます。

あかちゃんのおむつ替えも、その機会のひとつです。

「おむつ替えるね」と声をかける。
からだの名前を自然に伝える。
あかちゃんの様子を見ながら、からだを丁寧に扱う。

毎回完璧にできなくても大丈夫。

できるときに、ひとこと。

そんな小さな関わりを通して、「あなたのからだは大切だよ」という気持ちを伝えていきませんか?

かりゆし助産院では、こうした日常の関わりも大切にしながら、子どもたちが自分自身と相手を尊重し、自分らしく生きる力を育む包括的性教育について発信しています。

性教育を、特別なことではなく、毎日の暮らしの中にある身近な学びとして。

これからも、子どもの成長に合わせた「からだと性」の伝え方を、一緒に考えていきましょう。

次回は「トイレトレーニングと包括的性教育」

次回は、子どもの成長とともに身近になってくる「トイレトレーニングと性教育」についてお話しします。

トイレトレーニングは、排泄の自立だけを目指すものではありません。

自分のからだの変化に気づくことや、「できた・できない」だけで子どもを評価しないことなど、からだを大切にする関わりについて一緒に考えていきます。

かりゆし助産院から

かりゆし助産院では、あかちゃんとの暮らしや育児のご相談に加えて、「からだと性を知り、自分らしく選ぶ力」を育むための「生と性のおはなし」にも取り組んでいます。

「子どもに性のことをどう伝えたらいい?」
「こんなとき、どんな声かけをしたらいい?」
「性教育って、家庭では何から始めたらいい?」

そんな小さな疑問も、どうぞお気軽にご相談ください。

ご家庭の状況やお子さんの発達に合わせて、一緒に考えていきます。


あわせて読みたい

第1弾|0歳から始める性教育
「性教育はいつから始めたらいいの?」と気になっている方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

次回予告|トイレトレーニングと包括的性教育

シリーズを通して、子どもの成長に合わせた「からだと性」の伝え方を一緒に考えていきます。

参考にした文献・資料

本記事の作成にあたり、包括的性教育や、子どものからだと安全を守る教育に関する以下の資料を参考にしました。

UNESCOほか(2018)『International technical guidance on sexuality education: An evidence-informed approach (revised edition)』
文部科学省『生命(いのち)の安全教育』教材・指導の手引き

※本記事では、これらの資料を包括的性教育や子どものからだを尊重する関わりについて考える際の参考資料として使用しています。