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かりゆし助産院の助産師である私は、がんを経験しました。

がんが見つかったのは、一番下の子が1歳になった直後のことでした。

上の子どもたちは小学生。まだ1歳の乳飲み子を抱えながらの告知は、頭が真っ白になるような出来事でした。

けれど、私はそれまで毎年、欠かさず女性のがん検診を受けていました。

そのおかげで、がんは初期の段階で見つかり、手術と経過観察による治療を受けることができました。

そして少し前、主治医から、

「これからは再発を気にすることなく、健康に長生きすることを考えてください」

と言っていただき、私はひとつの区切りを迎えることができました。

振り返ってみると、毎年がん検診を受けていたことは、単なる「健康管理の習慣」ではありませんでした。

「毎年行っていたから、今の私と家族がいる」

これは、がんを経験した私自身が実感していることです。

この記事では、がん経験者としての私自身の体験と、助産師として大切にしている「自分の体を知る」という視点から、女性のがん検診についてお伝えします。


がんになって気づいたこと

毎年のがん検診を続けてきたからこそ気づけたこと

私ががんを経験したのは、一番下の子が1歳になった直後でした。
助産師として、これまでたくさんの女性やそのご家族の体やこころと向き合ってきました。
妊娠、出産、産後の生活、授乳、女性や男性の体の変化、そして性や人の多様性について。

「自分の体を大切にしてくださいね」

そんな言葉を、患者さんやご家族の方々に伝える機会もたくさんあります。
だからこそ、私自身も毎年のがん検診を受けることを、自分との約束にしていました。
特別な自信があったわけではありません。

「助産師として伝える立場だからこそ、自分でも実践したい」

そんな、ごく自然な気持ちから続けていた習慣でした。
その積み重ねが、まさか自分自身の未来につながるとは、当時は思ってもいませんでした。
がん検診は、がんがないことを保証してくれるものではありません。
それでも、症状がない段階で異常を見つけ、必要な精密検査や治療につなげるための大切な機会です。
厚生労働省も、適切な年齢と受診間隔でがん検診を受け、早期発見・早期治療につなげることを重要としています。
(厚生労働省「がん検診」2026年確認)

早期発見から「検診卒業」までの道のり

私の場合、毎年の検診を続けていたことで、がんは初期の段階で見つかりました。
治療は手術と経過観察のみで、大きな苦痛を伴う長期の治療を受けることなく、その後の経過をみていくことになりました。

もちろん、がんの種類や進行度、治療方法は一人ひとり異なります。
「早期なら必ずこの治療で済む」というものではありません。
それでも私自身にとって、早い段階で見つかったことは大きな意味がありました。

後になって夫が、
「小学生の2人と1歳の子を抱えて、妻を失うかもしれないと思うと不安でたまらなかった」
と話してくれたことがあります。

その言葉を聞いたとき、私は初めて、
自分が検診を受けていたことは、自分自身だけではなく、家族の日常を守ることにもつながっていたのかもしれない
と実感しました。

そして少し前、主治医から、
「これからは再発を気にすることなく、健康に長生きすることを考えてください」
と言っていただきました。

私にとって、それは大きな安心につながる言葉でした。
長い間続けてきた手術後の検診にも、ひとつの区切りを迎えることができました。

私にとっての「検診卒業」です。

がん検診の本当の意味

早期発見がもたらすもの

がんは、早い段階で発見できれば、治療の選択肢が広がることがあります。
国立がん研究センターの最新の統計でも、がんは進行度によって5年相対生存率に大きな差がみられます。

例えば女性の乳がんでは、臨床進行度が「限局」の場合の5年相対生存率は99.3%である一方、「遠隔」の場合は39.3%でした。
子宮頸がんでも、「限局」では95.7%、「遠隔」では22.5%となっています。
ただし、これらは集団としての統計であり、個人の経過や治療結果をそのまま予測する数字ではありません。

それでも、できるだけ早い段階で見つけることの重要性を考える材料になります。
(国立がん研究センター「最新がん統計」2026年7月22日更新)

そして、がん検診で大切なのは、

「症状がないから大丈夫」ではなく、「症状がないときに確認する」

ということです。

がん検診は、症状のない人を対象に、がんを早期に発見して死亡を減らすことを目的として行われています。
一方、何らかの症状がある場合は、「次の検診まで待つ」のではなく、医療機関を受診することが大切だと思います。

私自身も、自覚症状がほぼない時にがんを経験したことで、
「元気だから大丈夫」
ではなく、
「元気な今だからこそ、自分の体を確認しておく」
という考え方をより大切にするようになりました。

女性のがんは「自分には関係ない話」ではない

日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性61.1%、女性50.1%です。
つまり、女性ではおよそ2人に1人が、生涯のどこかでがんと診断される計算になります。

女性では、乳がんの生涯罹患リスクが11.8%、子宮がんが3.6%、子宮頸がんが1.3%、子宮体がんが2.3%、卵巣がんが1.6%とされています。
(国立がん研究センター「最新がん統計」2026年7月確認、2023年データ)

もちろん、すべてのがんを検診で見つけられるわけではありません。
現在、国が推奨している女性向けのがん検診は、主に乳がんと子宮頸がんです。
そして現在の主な検診方法は、

・乳がん検診:40歳以上、2年に1回、マンモグラフィ
・子宮頸がん検診:20歳以上、2年に1回、細胞診
・HPV検査単独法:30歳以上、5年に1回(厚生労働省の要件を満たす自治体で実施)

となっています。
(国立がん研究センター「がん検診について」2026年確認)

「自分には関係ない」と思うのではなく、年齢や自治体の制度に合わせて、自分が対象となる検診を知っておくこと。
それも、自分の体を大切にする一つの方法だと思います。

日本の女性は、どのくらいがん検診を受けている?

日本では、がん検診の受診率を60%以上とすることが国の目標になっています。
一方、2022年の国民生活基礎調査では、40~69歳の女性の乳がん検診受診率は47.4%、20~69歳の女性の子宮頸がん検診受診率は43.6%でした。
まだ、対象となる女性の半数程度にとどまっています。

「受けたほうがいいことは分かっているけれど、なかなか行けない」

そんな方がいることも、私は臨床で活動もしている助産師として体感し知っています。
だからこそ、「検診を受けましょう」と一方的に伝えるだけではなく、

なぜ行けないのか。
何が不安なのか。
どうしたら少し受けやすくなるのか。

そこにも目を向けたいと思っています。

包括的性教育と「自分の体を知る」ということ

私が学んでいる包括的性教育とは何か

「性教育」と聞くと、性交渉や避妊、性感染症について学ぶものだと思われる方もいるかもしれません。
もちろん、それらも大切なテーマです。

しかし、包括的性教育はそれだけではありません。
体やこころ、人間関係、ジェンダー、性の多様性、権利、安全、意思決定など、性を人の生き方と切り離さずに学び考えていくものだと思います。

ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」でも、身体の尊重、プライバシー、身体の自己決定、健康に関する情報へのアクセスなどが重要な学習内容として示されています。

私は、助産師としてこの視点に注目し、大切にしていきたいと思っています。

性について知ることは、特別なことではありません。
自分の体を知り、自分の気持ちを知り、自分で考え、選択する力を身につけること。
それは、生きていくための大切な力だと考えているからです。

「体を知る」「こころを考える」ことは、自分を守る土台になる

自分の体について正しい情報を知ること。
体の変化に気づくこと。
「これはいつもと違うかもしれない」「こんなことが起こっている。大丈夫?」と感じたときに、誰かに相談すること。
そして、必要なときに医療機関へつながること。
これらはすべて、「自分の体やこころを大切にする」ということにつながっています。

包括的性教育では、誰もが自分の体やこころ、性について必要な情報を得て、自分の健康や人生について考え、選択することが大切にされています。

私は、この考え方は子どもだけのものではないと思っています。
大人になってからも、

「自分の体について、もっと知っていい」
「分からないことは聞いていい」
「不安なことは相談していい」
「相談することは弱いことではない」
「自分の体に関わることを、自分で選んでいい」

という感覚を持つことは、とても大切です。
がん検診も、その延長線上にあります。

「検診が怖い」「行きたくない」気持ちにも寄り添いたい

恥ずかしさや不安は、自然な気持ち

「婦人科に行くのが苦手」
「内診が怖い」
「検査が痛そう」
「結果を聞くのが怖い」
「忙しくて、自分のことは後回しになってしまう」

そんな気持ちは、決してあなただけに限られたものではありません。

女性の体に関する検査では、身体を見られることへの抵抗感や、過去の経験から不安を感じることもあります。
「検診に行かないなんて、自分の健康を大切にしていない」
と責めるのではなく、
「怖いと感じるのには、理由がある」
と考えることも大切です。

まずは、その気持ちを否定しないこと。
そして、自分が少しでも安心して受けられる方法を探すこと。
それも「自分を大切にする」ということだと思います。

一歩を踏み出すためにできること

検診への不安があるときには、いくつかできることがあります。

① 事前に検査内容を確認する

「何をするのか分からない」ということは、不安を大きくします。
子宮頸がん検診では、問診、視診、子宮頸部の細胞診、内診などが行われます。
検査方法や流れを事前に確認しておくことで、少し心の準備がしやすくなります。

② 不安や痛みを我慢しない

検査を受けるとき、
「内診が怖いです」
「痛みを感じやすいです」
「緊張しています」
と伝えて構いません。
国立がん研究センターも、内診などについて気になることや痛みを感じやすいことがあれば、検査前の問診で医師や看護師に伝えるよう案内しています。

③ 自分に合う医療機関を探す

「女性医師のいるところがいい」
「説明を丁寧にしてくれるところがいい」
「予約制のところが安心」
など、自分が少しでも安心できる条件を考えてみるのも一つです。

④ 症状があるときは「検診」ではなく受診を

ここはとても大切です。
がん検診は、基本的に症状がない人を対象としています。
不正出血、月経以外の出血、乳房のしこりや変化など、気になる症状がある場合には、次の検診を待たず、ぜひ症状が出て早い期間で医療機関を受診しましょう。

⑤ 「卵巣がんの検診」についても正しく知っておく

卵巣がんについては、現在、日本で国の指針に定められた一般的ながん検診はありません。
そのため、子宮頸がん検診のときに病院やクリニックの方針で経腟エコーを受けたから、卵巣がんが発見できる
というわけでもありません。
一方、卵巣がんが疑われる場合には、内診や超音波検査、CT、MRIなどの検査が行われます。症状がある場合や、家族歴などから不安がある場合には、検診の際医師に相談することが大切です。
(国立がん研究センター「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 予防・検診」「検査」2026年3月17日確認)

がん経験者の助産師として、今伝えたいこと

自分の体とこころを知ることは、自分を大切にすること

がんになったことで、私は自分の体とこころについて、以前よりもずっと考えるようになりました。

そして今、改めて思います。
自分の体とこころを知ることは、自分の人生を大切にすることにつながる。

忙しい毎日の中では、自分のことを後回しにしてしまいがちです。
こどものこと。
家族のこと。
仕事のこと。
周りの人のこと。
それらを大切にするために頑張っているうちに、自分のことは最後になってしまうこともあります。

私自身も、3人の子どもを育てながら、がんを経験しました。
だからこそ、
「お母さんだから」
「家族がいるから」
「まだ若いから」
「今は元気だから」
という理由で、みなさんに自分の体を後回しにしてほしくないと思っています。

自分の体を知ること。
必要な情報を得ること。
検診を受けること。
気になる変化があれば相談すること。
それは、自分勝手なことでも、家族を置き去りにすることでもありません。
これからも大切な人たちと一緒に生きていくために、自分自身を大切にすることです。

私ががんを経験したからこそ、伝えたいことがあります。
「怖いから、行けない」
「恥ずかしいから、行きたくない」
そんな気持ちがあっても大丈夫です。

まずは、知ることからでいい。
自分の体について知ることから始めてみませんか。

まとめ

がんという経験を通して、私は「毎年のがん検診を続けてきたこと」の意味を、身をもって実感しました。

がん検診を受けたからといって、すべてのがんを発見したり防げるわけではありません。
また、検診には利益だけではなく、精密検査が必要と判定されることや、偽陽性・偽陰性などの不利益もあります。

それでも、国が推奨する対象年齢や方法、間隔で検診を受けることは、がんを早期に発見し、適切な治療につなげるための大切な方法の一つです。

そして何より、
「自分の体とこころを知る」ことは、自分を大切にすることの第一歩です。

検診に行くことを迷っている方がいたら、どうか自分を責めないでください。
怖くてもいい。
不安でもいい。
分からなくてもいい。

まずは、検診について調べてみる。
家族や友人に話してみる。
医療者に相談してみる。
そんな小さな一歩から前に進んでみませんか。

私自身が、がんを経験したからこそ、
「毎年行っていたから、今の私と家族がいる」
という実感を、これからも大切に伝えていきたいと思っています。

包括的性教育の講演活動とかりゆし助産院のご案内

かりゆし助産院では、妊娠中の不安相談・産後のケアや授乳相談・乳房ケア、育児相談などの助産師による支援に加えて、包括的性教育に関する講演活動も行っています。

学校、保育園・幼稚園、地域子ども会やサロン、企業など、それぞれの年代や対象に合わせて、

・自分の体を知ること
・いのちについて考えること
・自分と相手を大切にすること
・性について正しい情報を知ること
・自分の気持ちや意思を大切にすること

などをテーマにお話ししています。

「性について、どう伝えたらいいか分からない」
「子どもに体のことをどう教えればいい?」
「思春期の子どもの変化について学びたい」
「家族の健康を守るためにできることは?」

そんなご相談もお気軽にお問い合わせください。

また、助産院では、妊娠・出産・産後の生活、授乳、育児などについてのご相談もお受けしています。

自分自身やご家族の体について、気になることや不安なことがあれば、一人で抱え込まずご相談ください。